インタビュー

働く両親の背中を見て育ち、自然と同じ道へ

垂井町内で理容室を営む両親のもと、4人きょうだいの末っ子として育った多賀正泰さん。目に浮かぶのは、朝早くから店に立ち、楽しそうに会話を交わしながら来店客の髪を手際よく整える両親の姿。「自分の技術によって、人を笑顔にしたり、明るくしたりすることができる。子ども心に『いい仕事だな』と思っていました。」
自然と同じ道を志し、高校卒業後、愛知県で多店舗展開する理美容室で修業しながら、通信制の学校で美容師と理容師の資格を取得しました。「20年前に僕がこの業界に入った頃は、『技術は見て覚える』のが当たり前だった時代。少しでも早く一人前になりたくて、寝る間を惜しんで練習していましたね。」と、当時を懐かしそうに振り返ります。
仕事は順調そのもので、店長、ディレクターとキャリアアップ。忙しくも充実した日々を過ごす中、プライベートでは、同僚だった可奈子さんと10年前に結婚。それを機に、実家の敷地内に自宅を新築して、垂井町へUターンしました。そして多賀さんは愛知県内の店舗へ毎日車で通勤、可奈子さんはフリーランスの理美容師として東奔西走する生活に。「Uターンといっても、自宅にはほぼ寝に帰るだけの生活だったので、あまり実感がなかったですけどね（笑）。」
そんな多賀さんに転機が訪れたのは2年ほど前。会社では要職に就いていましたが、「40歳を目前にして、ふと思ったんです。このまま会社の発展に貢献していく道もあるけれど、人生の航路を変えるなら今しかない、生まれ育ったこの場所で独立開業したいなと。幸い、妻という心強いパートナーもいる。二人三脚でサロンを作り、いずれ、両親の店も引き継ぐのが自分たちの役目なのではないか。」可奈子さんに相談すると、「いいじゃん、やろうよ。」と二つ返事で賛同してくれ、トントン拍子に話が進んだのだとか。

垂井町への思いを込めた「TAG hair」という店名

建築家と何度も打ち合わせを重ね、完成した理美容室は、木の温もりが心地よい空間。窓から望む山並みの景色も印象的です。多賀さん夫妻はこの店を「垂井の街のTAG＝シンボル、よりどころになるように」との思いを込め、「TAG hair」と名付けました。
施術台は感染症対策の効果を考慮して、ゆとりを持たせた2席のみ。接客のほか、カルテ整理、経理、掃除なども全てふたりで行います。「めざすのは、子どもからお年寄りまで、家族みんなで通える地域コミュニティサロン。そう、両親の店のような。オープンして1年、ありがたいことに地元のお客様だけでなく、前職時代のお客様も遠方から通ってくださいます。『垂井町は自然がたくさんあって癒やされる。ドライブがてらお店に来るのが楽しみになった。』とおっしゃる方もいて、うれしいですね。」
自分の店を持ったことを機に、多賀さんの生活は一変したそう。一番の変化は夫婦で過ごす時間が長くなったこと。「同業者ゆえ、全くぶつからないと言えば嘘になりますが、ふたりで店づくりをする楽しみのほうがはるかに勝る。」と多賀さん。言葉の端々から、可奈子さんへの深い信頼感とリスペクトが伝わってきます。もう1つの変化は、地元の消防団に入団したこと。「火災や災害に備えるさまざまな訓練、夜警、各種イベントへの参加と、活動はけっこうハード。でも、苦楽を共にすることで、地域の中で職業や年代を超えた仲間がたくさんできました。今後、消防団の活動以外にも、それぞれの職能や得意なことを生かして、垂井の街を盛り上げていけたらと思っています。」

「TAG hair」
住所：不破郡垂井町栗原243-1
TEL：0584-40-1493
営業時間：9:00～19:00／月曜、第1火曜、第3日曜定休
https://www.tag-hair.com

My favorite spot

地元で評判の和食処。丁寧に作られた料理はどれもおいしくて、ランチに、テイクアウトのお弁当に、消防団の仲間たちとの飲み会にと、お世話になっています。オーナーさんの温かな人柄も魅力です。

「御料理 うえだや」
住所：不破郡垂井町綾戸246
TEL：0584-22-0513
営業時間：11:30～14:00、17:30～23:00／月曜定休